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きっと彼のことだから、いつもお世話になっています、くらいの気持ちでプレゼントを選んでくれたに違いない。
現に付いていたメッセージカードは既存のもので、紙面にも〝for you〟としか書かれていなかった。
だけど、本当にそれだけなのだろうか。本当に、そこに別の感情はなかったのか。
だって少なくともあの日の君は……。
そんなふうに思ってしまうから、よけいに釈然としないのかもしれない。
俺はキッチンへと向かい、買い置きしていたナッツ類を少しだけ皿に入れて、グラスと共にそれらをリビングに運んだ。
……分かってはいるんだ。
今更どうしようもないってことは。
そろそろ静も久々の実家でゆっくりしている頃だろう。なんだかんだ言いながらも仲のいい家族と、温かな家庭で、のんびりとした時間を過ごしているに違いない。
それはとても素敵なことだし、素晴らしいことだと思う。思うのに、
(でも……何も3日までずっと帰らなくても……)
なんて、なおも俺はそんな未練がましいことを考えてしまう。
あの様子だと、弟さんの怪我だって本当に大したことはないのだろう。だから急いで帰ることもしなかった。
それなら俺にも少しくらい、君の時間を分けてくれたって――。
(……俺は今回、実家より君を優先したのに)
そこで俺ははっとした。
「何、考えてるんだ……俺は」
そしてそんな自分が情けなくなる。
俺はこんなに心が狭かったのか。
こんなに自分勝手だったのか。
……去年一緒に過ごせなかったせいでよけいそう思ってしまうのか。
2年前の今日のことを思い出す。
あれは俺が君に手を出す前のことだったけど、そのわりにすごくいい雰囲気だった。それこそ、まるで恋人みたいな……。
あんなふうに、今年も君と過ごしたかったんだ。最後に、もう一度だけ。
(……だからって、最低だ)
それこそ、ほんの数日前――あんなにも幸せなクリスマスを過ごせたばかりなのに。
俺は密やかに奥歯を噛みしめると、やけになったようにグラスを煽った。
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