18.夢の続きを【Side:見城将人】

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 天板に置かれたグラスは一つ――。 「受け取ってくれたんですね」  静は俺を見るでもなく言った。  その横顔が、僅かに綻んだように見えたのは気のせいだろうか。 「ああ、言うのが遅くなってごめん。ありがとう。嬉しかった」  俺は下ろした髪を手櫛で梳きながら、静と同じ先を見て頷いた。  本当はアリアに行ったときに伝えるつもりだったんだけど、静が帰省するって言ったのがあまりに衝撃で、すっかり言いそびれたままになっていた。 「全然知らなかったから、本当に驚いたよ」 「いえ……いつもして貰ってばかりなので……」 「そう、だよね……いや、うん。それでも嬉しいよ。ありがとう」 「…………」  まぁ、そうだよね。やっぱり君はそういうよね。  俺は密やかに苦笑すると、ダイニングテーブルの上に置いていたタオルで再び髪を拭き始める。  長い髪とタオル(それ)で半ば顔を隠すように手を動かしながら、その一方で、思い出したように口を開いた。 「……で、えっと……。ごめん。俺の記憶では君が帰ってくるのって3日だったと思うんだけど……」 「……っ」  自分のことは見られないようにしながらも、彼の様子を窺うことはやめない。  静は俺の言葉にぴくりと僅かに身を揺らし、 「弟は、ほんとに大したことなかったので……」 「あ……そっか。それは良かった」  なぜかそこで一瞬目を泳がせてから、 「なので……もしまだだったら」 「?」 「初、詣――」  最後に思いがけない言葉を口にした。 「……待ってて。すぐ用意するから」  言えば静は小さく頷いた。髪がかかってよく見えないその目端が、じわりと赤く染まっている気がした。  俺はばさりとタオルを掴み取り、すぐさまリビングから姿を消した。
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