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「……そう、ですかね」
「もっと甘えてくれたらいいのにって、ずっと思ってたよ」
「…………なんで、俺がアンタに……」
並んで寝転がり、二人で同じ天井を見上げていた。僅かに上擦ったその声に横目に目を遣ると、静の目端が淡く染まっているように見えた。
(……可愛い)
間接照明のせいかもしれないと思いながらも、俺は「ごめん」と呟き、再び静へと手を伸ばす。
そしてまた、当たり前みたいに彼を組み敷いた。
「……そんなにしなくても、俺は逃げねぇよ……っ」
何度となく耳にした言葉が、今夜は酷く甘く聞こえる。
以前はもっと、どこか自棄になっているようでもあったそれが、嘘みたいに表情を変えている。
俺のことをちゃんと受け入れてくれているのだとわかる。
……そう、きっと静は、俺のことが好きだ。
直接確かめることはできないけれど、そう思えば思うほど、ますます気持ちが止められなくなる。
その翌日も、そのまた翌日もずっと似たような過ごし方をした。静からもらった限られた3日間を、彼は俺のしたいようにさせてくれた。
昼となく夜となくワインを飲んで、飲ませて、食事は自炊かデリバリー。
俺が好きに触れても彼が本気で拒絶することはなく、時に他愛もない話をして、笑って、寝て、寝ていても構わず身体を繋げたりもした。
そうすることで、俺は確かめたかったのかもしれない。君も俺と同じ気持ちだと、はっきりさせたかったのだ。
俺は〝いま〟、俺はこの上なく幸せだよって。
君もそうだよねって。
「……ねぇ、静」
そんな中、口を突いた言葉は。
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