18.夢の続きを【Side:見城将人】

16/16

199人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
「俺の恋人になってよ」  自分でも驚いた。  驚いたけど、止められなかった。 「春まででいいから、俺と恋人ごっこをしてくれないかな」 「――は……?」  その言葉は、思ったよりも君を動揺させてしまったらしい。  そうだよね。君にはきっと想像もつかない提案だったよね。  だけどその姿すら可愛いと、愛しくて堪らないとしか思えなかった俺は、本当に何も見えなくなっていたんだろう。 「何、ばかなこと……」 「俺は本気だよ」  遮るように言いながら、取り替えたばかりの真っ白なシーツの上で、新たに深く繋げた身体を――僅かに強張るその顔を、俺は静かに見下ろした。  ……温かい。できることならずっとこうしていたい。  だけどそれは無理だから。それはわかっているから。だから、もう少しだけ。  何度触れても飽きないこの子を、俺だけのものに――。 「――…」  信じがたいように見上げてくる視線が俺を捕える。それをまっすぐに受け止め、俺はいっそう柔らかく微笑んだ。 「ね……いいよね?」  ……まるで君を試すみたいに。  静はそれを拒否しなかった。  拒否しないかわりに、承諾もしてくれなかったけれど、俺はそれでもこの願いは叶えられたと思った。  そうして、彼のバイトがあると言った4日の朝まで、俺は彼を自宅に帰さなかった。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

199人が本棚に入れています
本棚に追加