2.君の傍にいるということ

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「ホットのカフェラテを二つ――」 「え?」  俺が当たり前のように二人分の注文をすると、(せい)が戸惑ったような声を上げた。  そんな彼を一瞥し、 「時間ない?」 「なくはない、ですけど……」 「じゃあ、もう一杯付き合って」  半ば一方的にそう告げると、続けてスタッフにも「以上で」と伝えて下がってもらう。  静の方はまだ何か言いたそうだったけれど、結局最後には溜息一つでそれを飲み込んでいた。 「見城さん、飯は?」  ややして、何かを思い出したみたいにメニュー表を示される。釣られてそちらに目を遣ると、すぐに言葉の意味を理解した。 「あぁ……まだ、だけど」  まだなら、何か食べたらどうですか? 言外に彼はそう言っている。  昼食(どき)と言うには少々遅いものの、店のランチタイムはまだ終わっていなかった。そして何より俺は、確かに昼食(その)ためにアリア(ここ)に来た。 (どうしようかな……)  だけど正直、今はもうそんな気分ではなくなっている。  なんて言うか、今は食べるより静と話がしたい。さっきの続きが気になりすぎる。  ……とは言え、はっきりそう伝えるのも何だから、 「じゃあ……」  と、俺はメニューを確認することもなく、ただ以前食べたことのある軽食を追加注文することにした。  *  *  * 「えっと、それは要するに……告白してきた子が、昔付き合ってた相手の友人だった、ってことかな?」  相変わらず静の口は堅かったけれど、そこはほら、そういうの俺巧いから。  気が進まない食事をそうと悟られないよう進めながら、何でもないことのように誘導し、それと分からないように尋問する――。そうしてどうにか得た情報から、導き出した答えがそれだった。 「……まぁ、そうですね。そんな感じです」  静はカップに口をつけながら、どこか他人事のように言った。 「なるほどね」  だから俺も、あえて他人事のように頷いて見せる。――だけどその実、胸中は存外複雑だ。
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