2.君の傍にいるということ

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(もう少し教えてくれたらいいのになぁ……)  さりげなくも食い下がる俺に、結果として静が教えてくれた情報は三つほど。    一つは今日、バイト先で今夜一緒に過ごせませんかと誘われたこと。(告白されたとは言ってない)  二つ目は帰り際、その子の知人とやらが店に来たこと。(多分その子に会いに来たのだろう)。  そして三つ目は、その知人は静にとっても顔見知りだったということだ。(どこのどんな相手かまでは教えてくれなかったが)  ちなみに三つ目に関しては、少なくとも再会できて嬉しい、というような相手ではないようだった。 (うーん……どうなんだろ)  頑張って聞き出したわりには、どれも浅い内容だ。  だけどまぁ、それだけでもある程度の想像はつく。  いずれにしても、同じ職場で働く可愛い女の子にクリスマスの夜を一緒に過ごしてほしいと言われれば、それはもう告白されたも同然で。  そしてそこに現れたその子の友人は、静の会いたくない相手。  ……まぁ、会いたくないってだけで元カノと断定するのはあまりに稚拙な気もするけれど、静の反応からして、強ち間違っていないのではないかと思う。 「それで気まずくて、せっかく慣れた職場を変えようって……?」  勿体無いな。  年上ぶって、諌めるように言いながらも、心の中では「そんなとことっとと辞めたらいい」と繰り返している。  何故って……鬱陶しいからかな。  (自分)がやりたいことをやるのに、気がかりなことはない方がいいだろう……?  あくまでも、静のためだよ。 「まぁ……もうちょっと割のいいとこがいいってのもありますし」  そんな俺の胸中なんて知る由もなく、静はそう独りごちるように呟いた。  それからおもむろに手を伸ばし、メニュー表の隣に置いてあった、名刺サイズのアリアの(ショップ)カードを一枚取り上げる。  手持ち無沙汰気にその紙面を眺める彼に、食事を終えた俺は訊ねた。
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