199人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
そこは、時折彼と共に立ち寄っていた――もっと言えば、彼が学生の時にバイトをしていた、アリアと言う名のファミレスだった。
(この席にも、よく座ったなぁ………)
テーブルの並びも、恐らくは以前のままだ。
喫煙席それぞれに備え付けられた空気清浄機や、内装や家具など、こまかいところに変更はあるようだが、全体的な印象は三年前までのものとそう変わらない。
何気なくテーブルの上に指先を滑らせると、ちょうど店員の一人が注文を取りに来てくれた。成人男性としては少々小柄で、あどけない笑顔が可愛らしいその彼に、俺は一杯のコーヒーを頼んだ。
時刻は平日の昼下がり――。
それもまた俺がよく立ち寄っていた、比較的客の少ない時間帯だった。
「少々お待ちください」
会釈を残して去って行ったその背を笑顔で見送り、ついでのように店内を一望する。
そうして無意識に確認してしまう。過日のように、そこに君の姿がありはしないかと。
(……いるわけないか)
俺は苦笑しながら手元へと目を戻す。
……期待するだけ無駄なのは分かっていた。
最初のコメントを投稿しよう!