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「それで……今夜はどうするの?」
それを言うには、少しだけ勇気がいった。
だけどそれには目を瞑り、俺は続ける。
「その子にはつきあってあげるのかな」
すると静は、一瞬ぴたりと動きを止めて、
「……断ったからバイト先変えたいんですよ」
と、ばつが悪いみたいに溜息をつく。
「ああ、そうか」
俺はとぼけたふりして苦笑しながら、一方でまぁそうだよね、とその確認ができたことにほっとした。
静は胡乱げに目を細め、けれどもそれ以上は何も言わなかった。何も言わず、ただ残り少ないカップの中身を飲み干して、横目に時間を確認する。
「帰るなら、送るよ」
空気を察して先手を打つと、静は小さく瞬き、それから「どうも」と僅かに頭を下げた。
俺はどういたしましてとにっこり微笑み、自分もカップを空にする。
「じゃあ、行こうか」
伝票を手に立ち上がり、レジへと向かう途中、
(それにしても……)
ふと頭を過ぎったのは、女の子に告白される静の姿。俺が告白されるところは何度か見られているけれど、俺が静のそんな場面に遭遇したことは一度も無い。あの容姿からして、もてないわけではないだろうし、それなりに場数は踏んでると思うけど……。
(一体、どんな子だったんだろ)
今回告白した子も、元カノも。
どのみち、ある意味度胸があるなぁなんて思うのは、さすがに余計なお世話かな。
でもさ。実際、静は見た目は良いけれど、性格はまぁ淡々としてるし、どこか近寄り難い雰囲気はあるからね。
慣れてしまえばなんてことはないけれど、多分会って間もない女の子には……相当手に余るタイプだと思うんだよ。
(いや……それこそ余計なお世話か)
そんな自分に苦笑しながら、それでも冗談みたいな妄想は止まらない。
告白されて断って……まさかその時に、思い出のハグとか、キスなんて――。
(してないよね……?)
なんて。
俺は案外ばかなのかもしれない。
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