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俺は密やかに息をつく。
それから、はっとしたように静を見返して、
「誕生日……」
その言葉は、考えるより先に口を突いていた。
「え?」と、静が驚いたように俺を見る。
「俺、その日空いてる」
「は……?」
「来週の君の誕生日。静は? その次の日。日曜はなにかある?」
「……日曜もバイトが。遅番ですけど」
「遅番なら、前日の夜大丈夫だよね?」
「はぁ……まぁ。でもその日も遅番なんで、帰ってくるの遅いですよ」
「いいよ。日が変わっても待ってる」
「そこまで遅くはならないですけど。……店長が、18歳以上でも学生は10時までって決めてるみたいで。なので、家に着くのは半とか――」
「十分」
そこまで畳みかけるように言って、俺は駄目押しのようににっこり微笑んだ。
静はどこか気圧されたふうな反応だったけど、それでもはっきり断ってくるようなことはない。だから俺は引かなかった。気付かないふりをした。
「じゃあ、来週の、その日に……」
どこか戸惑った様子ながらも、静は頷き、再びドアへと向き直った。
「うん。楽しみにしてる」
俺がそう返すのを横目に、ドアにかけられていた手が動く。
けれどもドアは開かなくて――。
「ああ、ごめん」
俺は思い出したように施錠を解いた。
そんなことにすら気が回っていなかった自分に、らしくないな、と苦笑しながら。
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