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今にして思えば、随分強引な約束の取り付け方だったような気がしないでもない。
強引で、あからさまで、自分でもちょっと恥ずかしいくらいに必死だった――気もする。
別に静と一緒に飲むくらい、そう珍しいことでもないのに。
今までだって、もう何度か分からないくらい二人きりで飲んで――。
って、あれかな。
本格的に一緒に〝お酒を〟っていうのが初めてだから、余計に意識してしまうのかな。
だってそれまで静はまだ19で、どんなに夜遅くまで一緒にいたって、基本酒を飲んでいたのは俺だけだったんだから。
* * *
当日、静はバイトから帰り次第、俺の部屋に来ると言った。
シャワーを済ませて、ワインを持って。まだ少し湿り気のある髪を片手で軽く解しながら、
「どうぞ」
「……お邪魔します」
そうして促すままに部屋に上がり、俺の前を通り過ぎた彼からは、ふわりと石けんの香りがした。
「すみません、思ったより遅くなって」
時刻は23時過ぎ――。
ダイニングテーブルの上に持参したワインを置きながら、静が小さく頭を下げる。
俺は用意していたグラスと軽食をリビングへと運びながら、「全然構わないよ」と微笑んだ。
構わないどころか、大歓迎だ。
だって彼はシャワーまで済ませて、いつもより随分ラフな格好で来てくれた。
それってつまり、場合によっては朝までだってOKって意味だろう?
まぁ、明日もバイトだって言ってたから……ほどほどにしなきゃいけないのは前提だとしても。
「じゃあ、改めて……」
「……はい」
「静。二十歳の誕生日、おめでとう」
ワインの栓は俺が抜いた。静もバイト先で覚えたとは言っていたけれど、さすがに今日は譲れなかった。
赤い液体の揺れるグラスを掲げ、俺は静を見詰めて笑みを深めた。
「ありがとうございます……」
そこに一拍遅れで、静がグラスを近づけてくる。再度ぺこりと頭を下げて、それから気恥ずかしそうながらも、応えるように笑ってくれた。
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