4.君を知りたいと思うのは

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 今にして思えば、随分強引な約束の取り付け方だったような気がしないでもない。  強引で、あからさまで、自分でもちょっと恥ずかしいくらいに必死だった――気もする。  別に静と一緒に飲むくらい、そう珍しいことでもないのに。  今までだって、もう何度か分からないくらい二人きりで飲んで――。  って、あれかな。  本格的に一緒に〝お酒を〟っていうのが初めてだから、余計に意識してしまうのかな。  だってそれまで静はまだ19で、どんなに夜遅くまで一緒にいたって、基本酒を飲んでいたのは俺だけだったんだから。  *  *  *  当日、静はバイトから帰り次第、俺の部屋に来ると言った。  シャワーを済ませて、ワインを持って。まだ少し湿り気のある髪を片手で軽く解しながら、 「どうぞ」 「……お邪魔します」  そうして促すままに部屋に上がり、俺の前を通り過ぎた彼からは、ふわりと石けんの香りがした。 「すみません、思ったより遅くなって」  時刻は23時過ぎ――。  ダイニングテーブルの上に持参したワインを置きながら、静が小さく頭を下げる。  俺は用意していたグラスと軽食をリビングへと運びながら、「全然構わないよ」と微笑んだ。  構わないどころか、大歓迎だ。  だって彼はシャワーまで済ませて、いつもより随分ラフな格好で来てくれた。  それってつまり、場合によっては朝までだってOKって意味だろう?  まぁ、明日もバイト(仕事)だって言ってたから……ほどほどにしなきゃいけないのは前提だとしても。 「じゃあ、改めて……」 「……はい」 「静。二十歳(はたち)の誕生日、おめでとう」  ワインの栓は俺が抜いた。静もバイト先(アリア)で覚えたとは言っていたけれど、さすがに今日は譲れなかった。  赤い液体の揺れるグラスを掲げ、俺は静を見詰めて笑みを深めた。 「ありがとうございます……」  そこに一拍遅れで、静がグラスを近づけてくる。再度ぺこりと頭を下げて、それから気恥ずかしそうながらも、応えるように笑ってくれた。
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