4.君を知りたいと思うのは

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 *  *  * 「へぇ、じゃあその相手が……静の筆下ろ――」 「もっと普通に言えないんですか」  間違ってはいませんけど……と、静はグラスの残りを呷りながら呆れたように言った。  深夜を回り、午前2時を過ぎた頃。  静の持ってきたワインは思ったよりも飲みやすく――そして静は思ったよりも酔っていた。  初心者にしてはハイピッチで飲んでいたからかもしれない。  見た感じは――声のトーンも表情も――ほとんど変わっていない。  変わっていないんだけど、なんて言うか……その話題がね。  彼の口にするその話題が、まるで今まで聞いたこともないような経験談にまで及んでいて……そのことからも、見た目の割に酔いが回っているのがよく分かる。  まぁ、元はと言えば俺が面白がってつついたからではあるんだけど……。  でも、だからって普段、自分のことを多くは語らない彼が、 「でも初体験の相手が先輩(年上)ったなんて……なんか意外だな」  まさかそこまで赤裸々な話を聞かせてくれるなんて、夢にも思わなかった。 「俺、微妙に苦手なんですよ、年下って……」 「へぇ、そうなの……?」  そうかと言って、もちろん俺はその驚き(それ)を表には出さず、ただ何食わぬ顔で「それもまた意外だなぁ」なんて軽く笑うだけだ。  「あんなに面倒見がいいのに」と、僅かに肩を竦めながら、空になった静のグラスに再び赤い液体を注げば、 「……どうも」  と、素直にそれを受ける静の様子に、白々しくも笑みを深めて。 (ていうか……ホント気に入ったんだな)  俺の手が離れるのを待って、嬉しいように自分の方に引き寄せたグラスを、静は戯れのようにゆるりと揺らす。待っていたみたいに一口分だけ口に含むと、ややしてこくりと喉を鳴らした。それに合わせて、喉仏が小さく上下するのを、俺はいっそう観察するように眺めていた。
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