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高一の終わりから約一年。静が初めて付き合った相手は一学年上の先輩だったらしい。
先に好きになったのは静の方で、だけど告白してきたのは相手の方だった。テスト期間中、放課後の図書室で何度か一緒になったのがきっかけだったと言っていた。
別れたのは、相手が遠方の大学に進んだから。ほとんど自然消滅に近かったと、そこまで教えてくれたのはやっぱり酒が入っていたからだろう。
……まぁ、それもこれも、ある意味俺がそう仕向けたようなものではあるんだけど。
(でもホント……久しぶりだな、この感じ)
元々人への関心はある方だと思っていたが、こんなにも特定の相手のことを知りたくなったのはいつぶりだろう。
特に静の〝初めて〟話には、自分でも驚くほど興味が湧いた。
まるで思春期みたいだ思えばどこか滑稽だったけれど、少なくともそうであったからこそ聞くことができたのだと思うと、それはそれで後悔もなかった。
――ただ、静はどうなのかな。
そんな今夜のことを、彼はどれくらい覚えているんだろうか。
数時間後の彼の反応が、怖いような、楽しみなような。
まぁでも俺は……ひとまず何もなかった、何も聞かなかったふりをしていようかな。
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