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夏休みに入ると、11月の学園祭に向けて、サークル活動が少し活発になった。
相変わらず研究室に入り浸っていた俺も、そのための稽古にはどうにか時間をやりくりして参加している。
俺より更にしっかり参加していた静は、その間にもどんどん部員と親しくなって、
「あの子さ、多分暮科くんのこと好きだと思うんだよね」
「明日花。――そうなの?」
「うん。だってあの顔で裏方だよ? どうみても暮科くん狙いでしょ」
なんて、いつのまにか、そんなふうに噂好きの副部長――俺と同学年の――から目をつけられるくらいの存在にはなっていた。
まぁ、静は元々高身長な上、見た目もいいし、よく知れば人当たりも悪くない。それが二年目になって、ようやく認知されてきたということもあるのだろうか。
ちなみに〝あの子〟というのは、静と同じ科の後輩で、華があるわりに裏方希望で入ってきた女の子だった。更に言えば、春に新入生を勧誘した際、静がチラシを渡した子の一人だ。そう考えると、――あながち明日花の予想も外れていないのかもしれない。
「戻りました-!」
「あーお帰り! 買い出しご苦労様!」
16時を回る頃――。いつもより早めに練習を切り上げたその日は、部室棟前の広場で懇親会をすることになっていた。
部室棟前の広場は、学校への届け出さえしておけばバーベキューをすることもできるような、それぞれのサークルが必要に応じて使うことができる自由な場所だ。
そこに各自持参した道具を広げ、準備しているところに、買い出しに出ていた二年生が帰ってきた。その中には静の姿もある。
明日花と共に二階の部室を片付けていた俺は、先に下りた明日花を見送り、戻って来た二年生を一望してから、再び室内へと踵を返した。もう少しだけ掃除をしてから下りよう――せめて円卓の上くらいは空けて――と、思ってのことだった。
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