*6.深い意味はないはずで

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 俺はアイスコーヒーをブラックのまま一口飲んだ。それに釣られるように莉那も数回、アイスティーを吸い上げる。 「そう言われると……見城くんとちょっと似てるのかなって思っちゃうね。規模は違いすぎるけど」  莉那は気恥ずかしそうに気持ち眉を下げ、それを誤魔化すみたいにグラスを揺らした。  そんな彼女の表情に、思わず笑みが滲んでしまう。  こうして見ると、彼女はやはり可愛らしいと思う。優しいし、親切だし、いまだに彼氏がいないのが不思議なくらいだ。  俺があんなふうに断った後も、変わることなく絶妙な距離感で接してくれていて、それをやけに心地よく感じることもあった。  ……こんなことなら、思い出のキスくらい何でもなかったかもしれない。  と言うか、俺は何でしなかったんだっけ?  ……あぁ、そうだ。  あれは静が――。 「莉那、今夜空いてる?」 「え?」  考えてみれば、俺はしばらく場所にも行っていなかった。  時間に追われていたこともあるけれど、少しでも時間がとれるなら静と飲みたいと思っていたからだ。  だけど結局、その彼ともサークルの懇親会以降、飲めたのは一度きりで、それも翌日に響くと困るからと、本当に一杯しか付き合ってもらえなくて……。  結果彼が酔うことはなく、話題もサークルのことが主で、なんとも健全なひとときを過ごしただけだった。  それもあって、余計に人恋しくなっていたのかな。何となく、消化不良な日々が続いていた――そんな理由で?  ……やっぱり、こんな風に誘うのはルール違反だろうか。  思ったものの、 「あ……空いてる」  戸惑いながらも、嬉しそうに頷いた莉那に、俺は「じゃあ、後で連絡するね」と、引き返すことなく耳打ちしてしまった。
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