*6.深い意味はないはずで

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 静の手を一方だけ解放し、空いたその手で、肩口から胸元へと念を押すように触れていく。  厚めの外套の上からでも、鼓動は伝わってくるようだったけれど、体温を感じられないのがもどかしく、俺は急くように合わせを寛げた。  服の裾から指先を差し入れると、静の吐息が微かに乱れる。初めて触れる彼の素肌に、いっそう頭に血が昇った。  ぴったりと密着させるようにしながら、手のひらを這い登らせていく。間もなく掠めた突起は、思いの外固く張り詰めていた。 「……っ、……!」  つまみ上げると、ますますそれが芯を持つ。  ゆるゆるとひねるようにしながら、爪で先端を引っ掻けば、浮き上がる胸に合わせて、静の呼気も短く跳ねた。 (触れたい……もっと)  もっと、乱れさせたい。  ニットとインナーを一緒にめくりあげ、あらわになった胸元にキスを落とす。傍らの色付きがすっかり隆起しているのは、冷たい冬の外気――不思議と俺は認識できないけれど――のせいだろうか。 (……抱きたい)  思春期の少年のような稚拙な衝動を自覚しながら、それでもそんな自分がどうしても止められない。 (抱きたい、()を――)  見上げると、真上にある室内灯が静の顔を煌々と照らしていた。  羞恥心からか顔は背けられていて、けれどもその目元は誘うみたいに熱っぽく紅潮している。自由な側の手が、時折所在無げに中空をさまよっていた。  戯れに胸の突起に口付ければ、とたんにその手が俺の頭に添えられる。  ひく、と喉を反らせるのと同時に、待ってと言わんばかりの所作が、そのくせ躊躇うようなその力加減が、余計に俺の情動を煽った。 「静……いいよね」  色付きに唇を触れさせたまま告げると、静はイエスともノーともつかない上擦った吐息を漏らした。
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