1.君と出会ったその意味は

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 あの頃、そう思い至らなかったのは、俺がまだ純粋だったからかもしれない。  確かに俺は、物心付いた頃から弟のように可愛がっていた幼馴染みを、一度だけ汚してしまったことがある。まだ何の自覚もなかったある日の、夢の中でのことだ。 (英理(えいり)……ごめん)  その時、俺は心の中で何度も謝罪した。  だけど、それでも分からなかったのだ。〝それ〟が何を指すのかということまでは。だってまさか、自分が同性にも感情が抱けるなんて考えたこともなかったから。  そしてそのまま、俺は中学を卒業すると同時に家の都合で渡米して――。その後好きになった相手に再び同性がいたことで、ようやく自分の性的指向――バイセクシャルであること――を自認した。    そうなって初めて気がついたのだ。俺にとってはあれが初恋だったのではないだろうかと。  なるほど、初恋は実らないと言うのは本当らしい。そんなふうに思ったのを、今でもぼんやり覚えている。
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