198人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
* * *
31日の夜――。
日中降っていた雨も夕方にはすっかりあがり、日が暮れた頃には雲もすっかり晴れていた。澄んだ空気にたくさんの星が瞬いているのが見えて、今日の天気予報は当たりだったと内心ほっとした。
約束の時間が迫り、仕事などと出かける用意を済ませた俺は、愛車の後部座席にブルーグレーのチェスターコートと白いマフラーを投げ置き、急くような気持ちで静のバイト先に向かった。
予定より少し早くついてしまったものの、ただ待つだけの時間もそれはそれで悪くなかった。
ややして出てきた静を助手席に乗せ、俺はそのまま最寄りの神社へと車を走らせた。
少し足を伸ばせば有名どころの神社もあったのに、あえてそこにしなかったのは少しでものんびりしたかったからだ。だってやっぱり、そういうところは人混みもすごいからね。
静も特に希望はないみたいだったし、むしろそれでと言ってくれたから、行き先を決めるのに時間はかからなかった。
小高い丘の上にあるそこは、本殿までは少し距離がある。駐車場を出ると、緩やかな坂道に続いて、石畳の階段を上っていかなければならない。
静と共に歩き出した俺は、軽く引っかけていただけのマフラーとコートの襟を整えながら、横を行く静の姿をちらりと見遣った。
アイボリーのニットに黒のダウンジャケット。見慣れたラフなジーンズ姿。この時期、彼の服にタートルネックが増えるのは、とにかく防寒のためだと聞いたことがある。夏でもホットコーヒーを飲むことがあるほど寒がりなところは、意外性があってちょっと可愛い。
(にしても……寒そうだな)
雨上がりの冷えた空気のせいもあるのだろうか。場所によってはいまだ小さな水溜りの残る砂利道を進みながら、時折強く吹きつける風に静の肩が竦められる。その両手はすっかりポケットの中だった。
最初のコメントを投稿しよう!