11.変わったのは

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「え……。あ、もしかして、あの時久々に会ったって言うのが……」 「……ん」 (それもてっきり女の子だと思ってた……っ)  ワイングラスを傾けながら、片手間のように肯定されて、俺は思わず額を押さえた。  そのまま誤魔化すように髪を掻き上げ、ついでにワインも飲んでみたけれど、思ったほど気持ちは落ち着いてくれない。 (そんな感じって……)  確かに静はあの時、「それって元恋人?」という俺の予想に、〝そんな感じです〟と答えていた。  だけど、そんな感じって……これをそんな感じって言われても……。  何か……。何か、それはちょっと違わないか……?!  事情を知った今なら、あの時の双方の反応も分かる気はするのだ。  でも、分かる気はしても、ce8103ee-18bc-43db-bf2b-bf0ec6b7abb1 「優しい人だったんですよ」  あの男が、静の筆おろし(初めて)の相手だとか。  あの男が、君にそんな――どこか擽ったいような表情をさせる、大切な思い出の中の相手だとか。  そんなのはやっぱり納得がいかない(認めたくない)。  大体、その再会は本当に偶然だったのだろうか? あの男に、他に意図はなかったのか。 (本当はバイトを変えたのだって……告白がどうとかより、彼の方が理由だったんじゃ……)  勝手な印象であるにもかかわらず、考え始めると止まらなくなってしまう。  面映ゆいような、それでいて穏やかに視線を落とす静の空気が、余計に俺をもどかしいような心地にさせる。  いつの間にか心臓も早鐘を打っていて、そのくせ頭の中だけは妙に冴えていた。   (っていうか……静は……? 静はもう……吹っ切れているんだよね?)  瞬間、〝未練〟という言葉が胸を過る。  今までそんなふうに感じたことは一度もなかったのに、不意に浮かんだその疑念(思い)はなかなか消えてはくれなくて、 「彼のこと……今でも好きなの?」  気がつくと俺はそう口にしていた。  ――そんなこと、俺に訊く権利はないのに。
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