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第四話
ーーーそれがどうして
待ち合わせしたモアイ像の前で30分待った。もう30分待ってイライラした。携帯は留守電にしかならないし。LINEも未読のままだ。
俺って冬美の家がどことか知らなかった。目黒区としか。
次の日、学校に行くと英語クラスのみんなの様子が変だった。
「ちょっと!赤坂君!冬美はどうなったの?知ってるんでしょう?付き合ってるよねアンタたち」
何も知らない。なんなんだと逆に聞いた。
「テレビみてないわけー」
「冬美、逆走してきた車にはねられたんだよ。高速で。やっぱねえ。シルバー世代は考えて欲しい。免許は年齢で切った方がいい!」
ゼミ生全員と冬美の実家に行った。
四年の先輩が「その恰好で?」
え?
みんな黒い服を着ていた。
そうか。そうか。
そうか喪服とかか。
でもそんなの持ってない。
初めて行った冬美の実家は、大きな邸宅だった。
広い仏間に骨壺があって綺麗な袋に入って置いてあった。
写真には真っ赤な唇の真っ赤なセミドレスのアイツが微笑んでいた。
みんなが順番に霊前にお参りする。
黒い着物や黒のスーツに黒のネクタイ。
ゼミの仲間も同じだ。
そうか。喪服ってやつか・
そうか。
俺の番が来た。ふかふかした大きな座布団は刺繍が見事でその糸が足に痛い。
裸足だったと気づく。
線香に伸ばす指先が震えた。
次の瞬間。
ガシッと手首を掴まれた。
「待ちなさい。君は何だね。その恰好はなんなんだ。汚い!帰れ!」
もう怒鳴っていた。
「やめて。やめて。お父さん、失礼よ」妹だろうか庇ってくれた声が冬美と同じでびっくりした。
「帰れ!!帰ってくれっ!おまえのせいで娘は死んだんだ!おまえのせいだ。おまえさえ……」そこからは嗚咽になった。
「どうしてですか?どうして俺の、いや。どうして私のせいなんですか?教えてください」
冬美の父親は部屋を出て行ってしまった。
代わりに「違うの。ごめんなさいね。ただ。あの子があの日、出かけたのは。出かけたのは……高速道路は初めてだから心配で。私達が許したのが悪かった。ほんとに」冬美がそのまま年取ったような女の人は多分お母さんだ。
「何で。何があったんですか。教えてください!!」
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