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「獲物」を見つけた少女は弓を絞る。
生い茂る木々の枝葉や周囲の生き物たちと調和し、呼吸を合わせる。風がそよぎ薄柳の髪を緩やかに撫で。
辺り一面が自然。少女はこの山で生まれた。
刹那、弓矢を放つ。
矢の上端部に矧がれた鷲の矢羽根が踊り、ひゅんと唸る矢が「魔物」の頭を貫いた。
それは一瞬の出来事で、少女の獲物だった「魔物」は、自らの頭部を深く抉り貫いた矢の存在に気づきすらしないまま死んだ。
「荒御霊、どうか鎮まって......」
少女はそう言い、慣れた手つきで死んだ異形から矢を抜く。その矢は普通のものではない。邪気や妖気を浄化させる用途に使われる、破魔矢と呼ばれるものだ。
この蛇の形をした真っ黒い魔物の死骸は、他の生き物と同じように土には還らない。蒸気のようにどこかに飛散して、また新たな魔物を作ってしまう。魔物は不死なのだ。
魔物がこの山に無害なら放って置けば良いのだが、この破廉恥なまでにデカく黒い蛇は戦闘能力自体は高くないものの、「祟り」を撒き散らす。
この魔物に祟られた生き物は内臓から黒に変色し、やがて黒は皮膚の表面にも広がり、苦しみに悶えながら死ぬ。魔物を放っておけばこの山の生態系に甚大な被害が及ぶ。だから少女はこの自然を守るために、魔物が現れる度にこうやって討滅に赴いている。
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