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この世で一番美しい物。
そんな物にいったいどんな価値があると言うのだろう。
「そうか」
パチン、と彼は指を鳴らした。
「南のミツンヘイムに最高の錬金師がいて、千生雷刀を作ったと聞いたな。雷で刀を打ったそうだ。鑑賞用だが切れ味は見事らしい」
「それじゃあ、あなたは行ってしまうの?」
綾乃は炎の向こう側にいるキランを見つめた。
その二つの緑色の瞳が、炎に反射してキラキラと怪しげに光って見えた。
「おれは一度約束したことは守る。きみを必ずダシーダ国まで送り届けるよ」
その言葉に安堵した綾乃は、思い出したように疲労感を感じた。
彼女はもうくたくただった。
足は棒のようだし、関節はギシギシと音を立てそうなほど固まっている。
心身の疲れは深い眠りへと誘い、彼女は焚き火のそばで横になった途端、猫のように丸くなって熟睡へ落ちた。
まるで外敵から身を護る最良の方法であるかのようだった。
それを見ていたキランは、可笑しそうに口元をほころばせて眺めていた。
他の五人は、いったい今頃何をしていることだろう。
再び、ケンジントンハイム高校のクラスメート六人は、会うことが出来てるのだろうか。
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