附子

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 マナカは笑い終えると若いユキシに向かって「きちんと座しておれ」と言い、杏には「座れるようだったら座れ」と命令する。そこで無駄に抵抗して横たわっているのもおかしな話なので、杏は素直に体を起こしてしっかりと座った。ユキシは渋々歩いて上座に座る。しかも一段高くなっている場所に座ったのだった。 「ああ見えて、ユキシは伊乃国の若き王だ。敬意を払って頭を下げろ」  マナカに言われ杏は少しばかり迷っていた。杏は子が居ないとはいえ、香霧の妃という立場、頭を下げていいものか判断しかねていた。それをジッと見て居たユキシは「どうやら」とマナカに向かって話しかける。 「この女、やはり位が高いと見えるな」 「そうだな。  噂では皇子が妃を娶ったという話だ。歳の頃と言い、シルシュタウであることといい、お前がそうだという事だな?」  マナカの低く響く声がお腹の中まで届いていた。もし仲間であったならさぞ心強い人なのだろうと思う。 「子はまだおりませんが、私は確かに香霧様の妃候補でございます」  そこで視線を横にそらしてから、真っすぐユキシを見つめなおした。 「知らずにつれてきたとはいえ、これは一大事。  私を早々に香霧様の元へ帰してくださいませ」  毅然とした態度で最後まで言えたことに杏は自信を持ち、今度はしっかり顎を引いて  声音を下げて続ける。
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