附子

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「不老不死! 不老不死……そりゃ、笑える。シルシュタウで長生きしている者などあまり聞いたことがない。いや、まあ人並に? 歳は重ねているけれど。不老不死なんてどこからそんな話が出たのやら」  マナカの口調は確信があるらしく、これまで聞いたシルシュタウの情報の中で一番聞いてみたいと感じていた。 「不老不死でなければなんなのですか? 私は先日、毒を飲まされ一度死んだようですが……生き返ったらしいのです」  マナカは右手に器を持ったまま、器用に人差し指を立てて杏を指さして「まさにそれだ」と、言う。それでは杏には伝わらないので、杏は首を傾げた。 「毒に強いのだ、シルシュタウは。特に附子に強いという話を聞いたことがある。  附子を飲んでも息を吹き返すなんて面白い体質だとはおもわないか? 我らが口にしたら即、死に直結する。お前はそういう特異体質を聞いてはおらなかったという事か」  パクパクと肴を口に放り込んでは白く整った歯で噛み砕いて飲み込んでいく。締めは酒という具合に食べては飲んで、口が空いた時話を進めていくマナカ。 「毒に強い……初耳です」 「ふむ。それもまた封印したのだろうな。  暗殺集団であったことと共に、歴史上の暗部はそのまま捨てられ忘れられていくのが運命」
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