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暗殺集団と何度も言われることは、自らの出生を愚弄されているようで不愉快だった。小耳に挟んだことすらない。毒の話だって、そんなこと今まで誰も言わなかった。ただ、身をもって毒は体験していたので、そこはもしかすると真実かもしれないとは感じていた。
「その暗殺集団というのは本当のことなのですか? 私は聞いたことがありません」
大きな盆に山ほど果実を積んだ女が現れ、杏の前に果物を置いていく。見たことのない果実は少ない。それよりも海の民というのは、女もかなり露出の多い服装をしていた。袖のない衣、下に至っては膝上まで露わになっていた。
「その特異体質を使ってな。
敵と共に一緒に毒を飲むことができ、相手が死んだ頃に自分だけ息を吹き返すのだから凄いとおもわないか? 一緒に、もしくは先にシルシュタウが食べたり飲んだりすることで、敵は信用して毒の混入したものを口にする。シルシュタウも一度は息をしなくなるが奇跡的に息を吹き返すのだから、敵国の誰も疑問を抱かないという訳だ」
「必ず息を吹き返すのですか?」
「必ずかどうかはわからんが、きっとかなりの確率でそうなるんだろうな。
特に昔のシルシュタウは毒に慣れるために日ごろから少量の毒を摂取していたらしい。
我らの言い伝えではそういうことだ」
聞きたいことがたくさんあるような気もするが、杏は言葉を失って、これまでの事を思い返していた。
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