附子

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 確かに一度死んだのに生き返った。もし、この体質が相手を信用させるために使われていたとするなら、きっと効果があるだろう。余暉と食事をしたときに、先に食べるなと注意されたことが思い返される。同じ器からよそったものを相手が先に口に含み飲み込めば、それ以上警戒することなどあろうはずがない。現に余暉が先に食べたのを見て安心して口に運んだのだから。 「子が出来にくいというのも日頃から毒を摂取していたからだろうと俺は思っている。まあ、調べようがないし、憶測でしかいえないが……シルシュタウに子が少ないのは確かだからな」  水のように酒を煽るマナカはしっかりとした口調で持論を展開していた。その向こうでユキシは頬を薄く紅色に染めて「美しい容姿、敵の懐に入り込むのも容易ならば、確かに暗殺することなど他愛もないことだろうな」と、やや気怠そうに口を動かしていた。  相変わらず酒が弱いとマナカに笑われると、ムキになって酒をがぶ飲みするユキシはまるで親子のような距離感だった。
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