附子

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 二人が豪快に飲み食いしているのを他所に、杏は色々な点と点が結びついたような気がしてどんどん気が滅入ってきていた。  父様から受け継いだ短剣にはチチ鳥が描かれていた。きっと平和の象徴としてチチ鳥が選ばれているのだろうと軽く考えていたのに、マナカの話を聞いた今では全く違う意味を持ちだしていた。  それに、自分が毒を盛られたのに生き返ったことも、マナカの言葉を裏付ける。 「あの、なぜそこまでマナカ様はシルシュタウにお詳しいのでしょうか」  楽しそうに談笑している二人に杏はどうしても聞きたくなってマナカに問う。マナカは口をもぐもぐさせていて直ぐには答えられず、その変わりユキシが当然の如く言い放つ。 「それは伊乃国とシルシュタウが過去に協力し合っていたからだ。早くからその異質な体質に気がついていた我が先祖は秘密を暴露しない代わりに、シルシュタウの国、唐達帝國と密やかに協定を結んだという事だ。  唐達帝國は伊乃国を配下に置くことなく自由にさせる。そして我らは秘密を守り、附子を取ることを許可されていた」 「ユキシの言う通り。  我々は当然のように事実を語り継いできたが、そっちは本当に闇に葬ってしまったらしいな。まあ、国の中枢はもしかすると知っているか、何かしら記録に残している可能性はあるが」  マナカはそこまで言うと、持っていた器を置いて、杏に真っすぐ体を向けた。
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