帝都

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 秀零の脳裏に不愛想な男の顔が浮かぶ。愛想はなくても信用できる相手だった。なにより、秀零が不得意なことは黙ってやってくれたりするような男だった。 「香霧様。  杏様が戻っていらっしゃるということは、きっと余暉もどこかに居ると思うのです。その……罪に問わないで欲しいというのは身勝手なことだとは思いますが」  香霧はおずおずと申し出る秀零に腕を組んで、目尻だけで笑って見せた。 「嵌められた割に、寛大なのだな」  確かに杏の気持ちを利用して秀零を杏から遠ざけた挙句に、余暉相手に油断しているところを気絶させられたことは思い出しても腹が立つことだった。時が経った今では、それをしてでも杏を連れ出そうとする余暉にはきっと何か余暉なりの理由があったのではないかと、今になったらそんな風に考える秀零だった。 「全く罰しないという訳にはいかないが……理由も聞いてはおらぬしな。  身内に甘いというのは示しがつかぬし、その辺は苦慮するところだ。  余暉め、一言相談してくれればよかったものを」  香霧の言い分に強く同意しながらも、杏が戻ってくるであろうことや、余暉もきっとどこかに居ることを思うと、ここ最近の中で一番晴れやかな気持ちになっていた。
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