第12交差点 ふたり寄る夜

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 木造建築の平屋。私が学校や仕事を往復する為の拠点。そして、週末おばあちゃんを迎える為の大切な…帰る場所だった。 「どうぞ…入って? 散らかってるけど…」 「うん…おじゃまします」  ここまで送ってくれた樹深(たつみ)くんを、招き入れた。樹深(たつみ)くんは玄関の脇にギターケースを立て掛けて、ギシッと家に上がった。  居間に案内する。遺品整理の為の箱が積み重ねられて、少し圧迫感があって、樹深(たつみ)くんに申し訳なかった。  おばあちゃんに手を合わせたいと言ってくれた。  壁際に小さなテーブルを出して、そこにおばあちゃんの写真と、供花と、香炉と、リンだけを飾っていた。お仏壇や本来の仏具一式は、実家に祀られている。  マッチでローソクに火を灯し、お線香を捧げる樹深(たつみ)くん。リンを静かに鳴らし、手を合わせた。  おばあちゃん。この人が、樹深(たつみ)くんだよ。  第一印象最悪っておばあちゃんに話したけど…今はすごく、いい友達なんだよ。 「あ…このコースターは…?」  樹深(たつみ)くんが、リンの下に敷かれたコースターを見つけて言った。 「おばあちゃんが…誕生日プレゼントで…  おばあちゃんね…編み物がすごく上手だったの…」 「うん…そっかぁ…  なんかね、イッサらしいね、このコースター。  一度、お礼を言いたかったな。ハチミツ大根、イッサに教えて貰って助かりましたって」 「ふふふっ…うん…喜ぶよ…」  おばあちゃんの写真を見つめながら、私達は静かに言葉を交わす。  悲しみが込み上げるかと思ったけれど…そんな事はなかった。  むしろ…樹深(たつみ)くんと話していると、ポカポカと心が温まるのを感じる。 「イッサは…今、どこで寝てる?  きっと…あの辺りなんじゃない…?」  樹深(たつみ)くんが指を差した方向を見る。  窓の下。何で分かるんだろう。 「うん…向こうに寝室あるけど…ヒトリで暗い所はイヤで…  そこなら…月明かりが入ってきてね、おばあちゃんの写真も見えるから…」  樹深(たつみ)くんが私の手を引いて、そこに座らせた。樹深(たつみ)くんも私のすぐ隣に座る。  肩を寄せ合って、私の手の甲を、樹深(たつみ)くんの手が優しく覆う。 「しばらく…こうしてるよ?」  私の目を見ずに、樹深(たつみ)くんは言った。 「うん…ありがと…」  私も、目を伏せながら言った。  くっついている部分から、樹深(たつみ)くんの熱がじんわりと伝わる。  それだけで…安心したというか、なんかもう、この時の私にはよかった。  …手のひらを上に向けて、樹深(たつみ)くんの手を握り返したらよかっただろうか?  …いや、それは私も樹深(たつみ)くんも、多分望んでいなかったと思う。 …
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