第12交差点 ふたり寄る夜

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 樹深(たつみ)くんが傍にいてくれたのは、これっきりで…そこからまた、二週間以上が過ぎた。  私は少しずつ、元気を取り戻していった。  まずは勉強だけを、集中して頑張った。おばあちゃんが空から見てくれてるって思ったら、それが不思議と力になったから。  潤子(じゅんこ)さんのマッサージ屋も、きたいわ屋も、喫茶KOUJIも、そして樹深(たつみ)くんの路上も、自分がもう大丈夫って胸を張れるまで、意図的に足を止めていた。  もう、ダイジョウブ。  そう思えたのは、金曜日だった。  きたいわ屋に顔を出す。(はじめ)ちゃんも大将も、私の顔を見てホッとしていた。前回ときたら、どうしようってくらい酷い顔をしていたと、この時に聞いた。 「勇実(いさみ)ぃ、おかえり」  (はじめ)ちゃんが私の頭をくしゃりと撫でた。  いつもの22時に仕事を上がる。自転車にも危なげなく乗れるようになった。カッシャン、カッシャン、とペダルを漕ぐ。  久しぶりの例の場所、人だかりが出来ていた。  樹深(たつみ)くんの歌声が響いているけれど、姿が全く見えない。  人だかりから一歩引いた所で自転車を止めて、そこから、立ち塞がる人影の隙間を見る。  …いた。樹深(たつみ)くん。元気そう。  一曲終わって、「ありがとうございました」という声が飛ぶと、わっと拍手が沸いた。  樹深(たつみ)くん、どんどん凄くなっていく。  次の月曜、喫茶KOUJIに行こう。それで、ちゃんと話そう。元気になったよって、樹深(たつみ)くんのおかげだよって、伝えよう。  そう思いながらペダルに足を掛けた時、人だかりの隙間を縫って…樹深(たつみ)くんと目が合った。 …
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