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「久しぶりだねぇ、この構図(笑)」
マスターが私達にモーニングプレートを差し出して、コーヒーを淹れにまた奥へ引っ込んでいった。
「フフ、ほんとに。いつ以来? もう…ひと月以上前だよねぇ」
「う、ん。そうだよね。あの、樹深くん。あのさぁ」
樹深くんに、お礼。
「イッサ、金曜、聴いてくれてありがと。途中で行っちゃったけど(笑)」
「え? あ、うん。ごめん。ちゃんと聴いてたよ。
それで、あのさぁ」
早く言いたいのに。
「最近、どうしてた?
俺ね、日曜の夜も歌ってるの。織田桐さんとこにも、しょっちゅう話しに行って…そうそう、さっきもね、会いに行ってた。
イッサに逢ってない間、いっぱい場数踏んでね、色んな事を見て…」
どんどん言葉を被せてくる、樹深くん。
「あの、だから…
…もうっ!
樹深くん! 自分ばっかりで、私の話を聞いて?
私、もう大丈夫だよ。元気だよ。
みんなみんな、樹深くんのおかげ。ありがとう。
って、なんで、言わせてくれないかなぁ」
思わず樹深くんに苛立ちをぶつける。樹深くん、目を丸くして私を見た。
「…ごめん」
ションボリしてボソッと呟く。やだもう、面白い。
「分かれば、よろしい(笑)」
「…くくっ。あ~、やっと、この空気に戻ったなぁ(笑)」
うん。いつもの私達。さっきの心臓のドクドクはもう消えていた。
お礼をなかなか言えなかったから、そうだったんだろう。
…
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