第13交差点 未知の鼓動

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 急に、樹深(たつみ)くんとの距離が分からなくなってしまった。  遠巻きに眺める、路上ライブの樹深(たつみ)くんの姿。  安らぎであったはずの、喫茶KOUJIでの樹深(たつみ)くんとの時間。  ドクドクが常につきまとって、戸惑った。苦しい。  マッサージの勉強と並行して、遺品整理と、実家へ戻る為の引っ越しの準備をしていた、この頃。  ちょうどいい、その忙しさにドクドクを埋めてしまおうと考えた。  ある日曜日。  借りていた本を返しに図書館に行くと、そこでばったり樹深(たつみ)くんに逢った。 「わっ? あ、え、なんで?」 「イッサこそ。ここで逢うなんて珍しいね。  俺は、最近来るようになって。ちょっと、暇潰し」 「へえ。私はこないだ借りたから、返しに来た。  そうだね、あの時、図書カード作った時以来、ここでは逢ってなかったよね」  うまく、会話出来てるかな。なんでこんな事、気にしなきゃならないんだろう。樹深(たつみ)くんの目を、真っ直ぐに見れない。 「あー、そうだ、樹深(たつみ)くん。(はじめ)ちゃんがまた、きたいわ屋に顔出せって。ラーメン食いに来いって」  視線を外しながら、私は言った。 「え、あ、そう。ふぅん」  あれ? ナニ? 樹深(たつみ)くんの反応が素っ気ない。 「ふぅんって…樹深(たつみ)くん、(はじめ)ちゃんのラーメン好きでしょ?  (はじめ)ちゃんも、樹深(たつみ)くんにまた食べて貰いたいって言ってたよ」 「うん…そっか。わかった。近い内に行くって、伝えて」 「ホント? よかった~。(はじめ)ちゃんったらさぁ、あの味噌ラーメンを通常メニューに加えるって張り切っててさぁ…」 「…あ。危ない」 「え? あ…」  樹深(たつみ)くんにぐいっと手を引かれた。私の後ろを、人が通ろうとしてたから。  ドクドク…ッ  ああ、また。  いや、違う、今までのそれと、何かが違っている気がする。  胸の奥から競り上がったのは…樹深(たつみ)くんがいてくれたあの夜の、私の体を包んでくれた樹深(たつみ)くんの手の感触。  あれが、ありありと蘇った。 …
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