第13交差点 未知の鼓動

5/13
前へ
/167ページ
次へ
 うわ。うわ。うわ。どーしよう。  顔がカーッと熱くなって、私は樹深(たつみ)くんの手を振り払ってしまった。  赤い顔を見られたくなくて、俯いた。 「イッサ? なんか…ごめん。強く、引っ張り過ぎちゃった…?」  樹深(たつみ)くんが申し訳なさそうに言う。  私はフルフルと首を横に振った。もう、ムリ。これ以上樹深(たつみ)くんの傍にいるの、ムリ。 「あ、あーっ、私、そろそろ帰らないと…家で、やる事あって」 「え? あー、うん。そうなんだ。気をつけて帰って。  俺は…もう少ししたら、路上」 「あ、…そうなんだ。だから、暇潰し? そっか。  がんばって。風邪ひかないようにね? 樹深(たつみ)くん、寒がりだからなぁ」 「フフ、平気平気。そんなヤワじゃないって。  …あー、イッサ?」 「えっ? ナニ?」 「あのー…  ……  ……  …いいや。また今度、逢った時に話す」  樹深(たつみ)くんの手が伸びかけたけど、すぐ引っ込まれた。 「え、えと、あ、そう。じゃ、またね」  ドクドクとうるさい心臓の辺りを、そっと服の上から掴んで、私は図書館を出た。  家に着くまでの間、フラフラと歩いて、ぐるぐるぐるぐる、ずっと考えていた。  私、なんで今まで平気で樹深(たつみ)くんの横にいられたんだろう。  樹深(たつみ)くんの傍にいると、なんかヘン。いつもみたいに振る舞えない、そんな自分がイヤダ。  おばあちゃんの遺品整理が済んで、もうすぐ実家に戻る時が、すぐそこまで迫っていた。  樹深(たつみ)くんに伝えなきゃいけない大事な事なのに、言えなかった。電話もLINEも出来ないほど、私は動揺していた。  樹深(たつみ)くんが私に話したかった事、これすらも…気に留められないほど、私は樹深(たつみ)くんの傍にいるのを恐れて…  樹深(たつみ)くんに逢わないように、樹深(たつみ)くんにばったり逢ったりしないように…  きたいわ屋にも、喫茶KOUJIにも、例の場所にも…また足が遠退いた。 …
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加