カレーで団欒を

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               2  翌朝、俺はまだ疲れていた。  何もする気が起きないほど身も心も疲れ果てていたのに、夜明け前から目が覚めた。  仕方がないので始業時間の少し前まで待ってから勤め先へ欠勤の電話を入れた。直属の上長がおらず、よりにもよって俺が最も苦手な女性副社長がでた。部下より仕事、仕事より面子が一番の難物中の難物だ。しかし、そんな副社長からキツい皮肉を言われはしたものの欠勤の申し入れは意外に早く認められた。しかも貯まった有給休暇を消化するためにも、まとまって休むようにとまで言われた。ただし今の案件の引継ぎだけはテレワークで終えてからとの業務命令付きで。  まぁ、当然と言えば当然か。                *  それからの日々、とにかく俺は時間を持て余した。  そうなると(ろく)でもないことしか考えない。  引き継がれた案件は失敗していないだろうか……有給休暇後に自分のデスクはあるんだろうか……いや、それより副社長から次はどんな仕打ちをされるんだろうか等々……。  でも一番大きな懸念は家族のことだ。  この状況は互いに憎しみあっての結果ではなかった。だから妻からは以前よりもメールが来るようになったし、俺からも近況を知らせるメールの回数も増えた。娘からは来ないが、まぁこれは年ごろの通常運転なんだろう、そう信じることにした。  朝から晩まで鬱々(うつうつ)していても気が滅入るだけなので、一日中テレビを点けてはいたが、今さら特に目を引くものがあるわけでもなく、かといって溜まっていた映画やドラマの録画を観ていると時間は潰せるのだが、なんだか人生の貴重な時間を無駄遣いしているようで、ますます自分が惨めになってくる一方だった。  そして2週間が経ったころ、俺にもようやく転機が訪れた。
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