懇談会~教師たちの晩餐~

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土曜日の午後、区目地区の中学校の教師の親睦を深めるため、懇談会が行われた。会場は我が高嶺中学である。  各学校から一名ずつ代表者が集い、簡単な食事をしながら教育の悩みを話し合うのだ。そしてうちの学校からは、責任理事の教頭と私が代表で出席することになっていた。  教頭は随分と張り切っているようで、昨日は早退して床屋に行ってきたようだった。そして手作りのフライドチキンと座席表を、せっせと並べているのだった。私も会場である視聴覚室へと椅子を運んだり、折り紙で輪っかを作って飾りつけたりと、結構忙しい。 張り切っているのは教頭だけではないのだ。私も胸の高鳴りを押さえられないでいた。その理由は山吹中学の黄桜先生であった。前回の親睦会の時に、私は一目惚れしたのだ。彼女は非常に美人であった。そんな私を察して、教頭が腕をつついてくる。 「山岸先生。今日は彼女に会えますな。」 教頭の汚わらしい笑顔に私は気分を害した。 「失礼な。教頭の分際で。」  つい、強烈な言葉が口を突いてしまい大変焦ったが、教頭は浮かれているのか全く気づいていなかった。
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