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第2話 ー挨拶ー
このシェアハウスはオープンしたばかりの女性専用の二階建ての一軒家。
咲良は今日からこの家に住む。
小鳥のさえずりが聞こえる早朝から荷物をせっせと運ぶ咲良。
シェアハウスには、棚や机、ベッドは備え付けがある為、引越し業者を頼むほどではなかった。
しかし、乱雑に運び終えた段ボールから、衣類、日用品、化粧品を並べていく作業は結構大変だ。
夕方になり荷物整理も一段落した頃、咲良のドアをノックする音がした。
「こんばんは〜。私E号室の桃子です。これからよろしくお願いします。」
明るく人当たりのいい挨拶で咲良は思わず見惚れてしまった……。
挨拶でこんなにも人に好印象を与えるものなのかと。されると、気持ちのいいものなんだなぁ。一人感慨にふけていた。
それから桃子は
「私、昨日この家に越してきて、もし作業が終わったらリビングでお茶でもしませんか?」
できる女とはこの人のことを言うのだろう。
お互い初対面にも関わらず、先に緊張をほぐしてくれる懐の広さ。
きっと朝から声かけたかっただろうに、様子を見守ってくれてたんだろう。
そもそも先に挨拶するべきだったが、早朝からの作業で、挨拶するタイミングを見失っていた咲良にはその優しさが心に染みた。
朝から荷物整理に没頭していた咲良は何も食べていなかったことに気がつき、緊張がほぐれたのか、お腹が鳴ってしまった。ナイスタイミング。
お腹の鳴る咲良を見て、桃子は優しく微笑んだ。
そして、お茶というよりご飯をとることにした。
引っ越してきたばかりの咲良はレトルトカレーを温め始めた。
桃子は昨日作り置きしたという炒め物を冷蔵庫から取り出していた。
階段を登る足音が聞こえた。
「あ、みんなこれからご飯?私もお腹すいたから食べようかな。」
ベリーショートで煙草が似合いそうなクールな女性だった。
「今日越してきた人?私C号室の一果です。宜しく。」
「あ、はい!今日越してきました、B号室の咲良です。宜しくお願いしますっ!!」
シェアハウスの良いところはリビングが広く、みんなそれぞれ違うことをしても一緒の空間にいれることだ。
桃子がせっかくだからみんな集まろうとLineでA号室の杏子とD号室の梨々子を呼び掛け、みんなで和やかに夕飯の時間を過ごした。
初めは緊張していた咲良だったが、シェアハウスを選択する人は、多かれ少なかれ、人と会話するのが好きな人が集まることを実感した。
「この家に引っ越して、よかったぁ」
咲良にとって、ここの住人と空間が最高に居心地の良い場所となった。
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