ブッダ・ロココ・ブランコ

一人暮らしを始めるにあたって女子たるもの部屋に化粧台くらいあったほうがいいだろうと近所のリサイクルショップをたずねる。店内の奥の方にひっそり置いてあった真っ白なそれはスツール付きとしては破格の安さ、ちょっぴり少女趣味で実家にいたときなら恥ずかしくて買えなかったであろうデザインだが、せっかくの一人暮らしなのだから自分の好きに正直になろうとその場で迷わず購入。気のいい店主さんが家まで運んでくれて、まだ段ボールまみれだった一室がほんのり自分の城なんだという実感がわいてきた。

その化粧台が仏壇だと発覚したのは一週間後。生活の準備が整いこれまでにかかった費用を計算していると、リサイクルショップのレシートに
「ブツダン　ロココチョウ」という文字を見つけた時だ。
最初はなにかの間違いだと思ったが確かに言われてみれば形は仏壇に見えなくもない。恐る恐る調べると最近の仏壇ってのはなかなかオシャレですねと感心してしまった。若い女性に大人気ってのは拝む方と入る方どっちのことを言ってるんだろうか。

なんにせよ私が中古の仏壇を買ったのは間違いないようだ。やたらと値段が安かったのも納得である。というか仏壇を中古で買うのって一体どんな層なんだろう。映画の撮影とかなら需要あるか。中古の仏壇が飛ぶように売れる世の中はあまり来てほしくない。
とりあえずクーリングオフ出来ないか調べるが、どうにも難しそうだ。それにタダで運んでくれたしなぁ。処分するにしても仏壇って一体なにゴミになるのか。どちらにせよ化粧台は必要だし。
まぁ物自体はオシャレなんだし今後友達や彼氏を連れ込んでも気づかれることはないだろう。しいて難点をあげるなら正面に置いた鏡に映る自分が心なしか遺影に見えてきたことくらいだ。ポルターガイストも金縛りも今のところないし大丈夫だろう。一応10年くらい前に死んだひいおばあちゃんの写真でも隣に置いておこうか。2回くらいしかあったことないけど。