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とりあえず唯一この仏壇の前の持ち主について知っているであろうリサイクルショップに向かう。運んでくれたハゲ散らかした初老の店主は私のことを覚えていたらしく顔を見るとにっこり微笑んできた。
「あのーこの前ここで買い物をしたものですけど」
「仏壇を買っていった子だよね。覚えてるよ」
私は確かに商品を買うとき化粧台と言ったはずなんだが都合の悪いことは聴こえない耳なのだろうか。
「あの仏壇について一つ確認したいんですけど。あれって仏壇自体の供養とかは済んだものなんですか?」
店主の表情が曇る。そして渋々といった感じで話し始める。
「実はうちとしても買い取ってからそういうことを知りましてね。それで売られたお客様に確認を取ろうと電話を掛けたのですがその……連絡がつかなくて」
大方この店主も最初は化粧台のつもりで買い取ったのではないだろうか。だとしても私に隠して売ったことに変わりないが。というかそれならレシートも化粧台で押し通してほしかった。なにロココ調とかちょっとこじゃれた名前にしてんだ。
「あの、家とかに伺ったりはしたんですか」
「元から引っ越しに際して不要になったものをまとめて売っていただいたので、その時に書いてもらった住所にはもう住んでいなくて……」
しりすぼみに声が小さくなる。小娘に問い詰められる中年男性というのは客観的に見るとかなりみじめだ。
「電話番号とか名前とかは教えてもらえませんよね」
「それはまぁ個人情報なので」
「じゃあせめて売られたのがどんな方だったかくらいは教えてもらえませんか」
「それならまぁ。えーと30代後半くらいの女性でしたね。他にもたくさん高価な家具を売っていただいたのでわりと裕福な家庭の方かと」
それなら生活に困窮して泣く泣く手放したとかではないのかな。せめて入っている魂が比較的安らかな善人であればいい。
「分かりました。色々ありがとうございます。一応デリケートな問題なので可能ならば店側で確認してくれると助かります。では、また何かあったら来ますね」
頭を下げて店を出る。たぶんもう来ないけど精々私の再来店に怯えるがいい。
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