これは愛の証

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「千晶さんっ」 床に倒れ伏す千晶を誠也が抱き上げた。 そのまま強く抱きしめる。 「ごめん。ごめんね··········」 悲痛な誠也の声。 千晶は虚ろに向かいの壁を眺める。 「またやっちゃったよ·····ごめん。本当にごめん」 千晶の頭を優しく撫でる。 「千晶さんのこと大好きなんだ。愛してるんだ。」 「ええ··········」 ほぼ無意識のうちに千晶は相槌を打っていた。 「だから止められなくなるんだ。僕が悪いんだ。ごめん、本当にごめん·········」 「いいのよ、あなた」 感情の無い声で応じる。この声もきっと誠也には届いていない。 「愛してるよ、千晶さん。だから僕のこと嫌いにならないで」 誠也の悲痛な声。 これをきくと駄目なのだ。 私が支えてあげなくてはいけない。私が彼を受け止めてやらなくてはいけない。 誠也もきっと苦しんでる。 妻として、彼を愛する者として、彼の弱さを受け止めて愛してあげなくちゃいけない。 震える誠也の背に手を回した。千晶を抱きしめる誠也の腕に力が籠る。 そのうち誠也は嗚咽を漏らし泣き始めた。 宥めるように、優しくその背を撫でる。 「誠也、大丈夫よ。私がいるわ。愛してる」 言い聞かせるように何回も繰り返す。 声を押し殺して涙を流すその姿に、先ほどまでの凶暴さは息を潜め、代わりに現れたのは青年の脆弱さだった。 ひとしきり泣いたあと、誠也は千晶から離れ涙を拭った。 それでもまだ少し涙が残る目で千晶を真っ直ぐ見つめる。 「ところで千晶さん、きいてもいい?」 「ええ」 縋るような声で誠也は続けた。 「昨日はどこに行ってたの?」
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