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見える傷
目を開けると見覚えのない天井があった。
しばらくの間ぼーっとそれを眺めていた千晶は、ふと我に返りばっと起き上がった。
「っつ··········」
全身が痛む。さらに頭痛も酷い。
やはり見覚えのない部屋。
腕時計は外されていてベッドの脇の小さなテーブルに置かれていた。
午前11時半。
カーテンは開けられておらず、室内に漏れた光が射し込んでいるでいる。
何も無い質素な部屋。
それが千晶のこの部屋に対する印象だった。
鞄の中を漁られた様子はなく、千晶の衣服も昨夜のままで乱れていない。
どこかに連れ込まれ乱暴されたわけではないようだ。
携帯を取り出し連絡が来ていないか確認する。
ふと気になった。家主が見つからない。
携帯を片手にベッドから出る。
ガチャ、という音がした。誰かが部屋に入ってくる。
咄嗟にベッドに戻り寝たフリをする。
ぺたぺたと裸足で床を歩く音。
人物は千晶が寝ているベッドまで近づいてきた。だがそこで動きを止める。
千晶のことを見つめているのだろうか。
何もされない。
それを逆に不安に思い、千晶は薄目を開けた。
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