慰めを

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自分の髪を撫でるセリの手の感触で目覚めた。 「寝顔はあどけないのね」 セリはくすりと笑った。少し恥ずかしくなる。 「可愛いわ」 短い佳澄の髪先を指に巻き付け笑みを零すセリ。 全て包み込むような彼女の笑みに、現実から逃れそのまま飲み込まれたいと思ってしまった。 セリは佳澄の師匠のような存在であり、それ以上の存在でもある。ただの体を重ねるだけの関係とは思いたくなかった。 「自分から誘ってきたくせにあなたすぐ果てちゃうんだもの、張合いがなかったわ」 拗ねたように言うセリが少し可愛かった。 確かに今日の佳澄はいつもより敏感でセリの攻めに早々に屈した。だがそれはセリが上手すぎるということもある。 「ごめん」 セリの横顔が一瞬千晶に重なった。いつか、千晶ともこうして····· いや、ありえない。期待してしまう自分をいい加減どうにかしたかった。 「それで、何があったの?」 「·····この前、店で私が声をかけた人がいたでしょ?」 セリの腕の中でここ数日を回想しながら、全てを打ち明けた。 千晶との再会、自分のカミングアウト、夫から千晶へのDV、そして千晶との情事。その後の鬱屈とした数日と誠也からの電話、そして今日の訪問。 話せば話すほど胸が締め付けられるほど苦しくなり、言葉に詰まることも少なくなかった。 自分がこんなにも千晶に恋焦がれ、翻弄され、心を掻き乱されていると改めて実感した。 「そう。そんなことが」 全てを聞き終えると、セリは指で佳澄の涙を拭った。 「可哀想に」 セリの言葉に顔を上げた。 「あなたは、なかなかに複雑で苦しい恋をしているのね」 悲しげに笑うセリ。それを見てまたも涙が滲んだ。 「私は·····どうしたらいいの?」 佳澄の悩みや戸惑い、苦しさが渦巻く瞳にセリは何も言えなくなった。 自分がこれから彼女にかける言葉のひとつひとつが、彼女のこれから先の人生を幸にも不幸にもしてしまう。 今の佳澄にとって、全てを晒し打ち明け頼ることができる存在はセリしかいないのだから。
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