溶かして解けて

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目が覚めた千晶は佳澄の腕の中にいた。 2人がけのソファの上で佳澄になだれかかるようにして眠っていたのだ。 風呂に入った覚えは無いが佳澄が服を取り替えてくれていたようで、上からはタオルケットがかかっている。 そっと佳澄を見上げるが彼女もまた眠っていてその寝顔が可愛かった。 じっと見つめているとそれに気づいたのかうっすらと佳澄が目を開けた。 「もう、大丈夫ですか?」 少し掠れた声で尋ねる佳澄。 一瞬思考が停止した。なぜ自分が今佳澄のところにいるのか。 もしかしたらこれは夢なのかもしれない。 現実から逃れたくて自分が創り出した幻想。 「·····千晶さん、雨の中公園にいたから家で何かあったんだろうと思って」 そう言われて徐々に記憶が蘇ってきた。 その記憶から逃れるように身を強ばらせ佳澄の服を握りしめた。 それを見た佳澄は何も言わずに千晶を背中から抱きしめた。 嫌だ、帰りたくない、怖い、ここにいたい。 ずっと佳澄の温もりを感じていたい。 でもそんなことは決して許されない。そんなこと分かってるけど、でも····· 「嬉しいです、私」 自分でも何を言い出したか意味が分からなかった。 でも腕の中の千晶から痛いほど伝わってくる不安や恐れをどうにか紛らわしてあげたかった。 「千晶さんにまた会えて。」 こんなこと言うのはどう考えてもおかしい。お門違いにも程がある。怒られても嫌われてもおかしくない。 ただ千晶にそんな顔をしないで欲しいというだけだった。せめて今だけは私のことだけを考えて欲しい。今すぐにでも千晶を連れてどこかに身を隠してしまいたい。それか、千晶をここに閉じ込めて2人だけで過ごしたい。 こんなのどうしようもないエゴだってわかってるけど、止められなかった。 「·····あなたしか、いなかった」 ポツリと震える声で漏らした千晶の言葉に佳澄の時が止まった。 「あなたしか、浮かばなかった」 まっすぐに佳澄を見つめる千晶の瞳とその声で佳澄は何も考えられなくなった。 その言葉の真意を掴みたくて、続きを聞きたくて、見つめ返すことしかできない。 「あなたに·····早く会いたかったから」 千晶の瞳から涙がこぼれ落ちた。あまりに透き通った綺麗な涙。 無意識のうちに佳澄はそれを指で掬いとっていた。 「私は、ずっと会いたかったです」 千晶の髪に触れ優しく撫でながら自分の中の想いを伝える。 「あの頃からずっと、千晶さんのこと好きだから」
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