300人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっ、おはようございます!」
人物は千晶を見てぱっと笑顔になった。
短い髪からは水滴が垂れ、首から下げたタオルを濡らしていた。笑うと八重歯が覗きその爽やかな風貌に無邪気さを加えている。
首からタオルを下げ半袖に半パンというラフな格好。
風呂上がりだろうか。
「お水持ってきますね」
人物はそう言うとそそくさとドアの向こうに消えていった。
そして直ぐに水を持って帰ってきた。
「どうぞ」
体を起こし差し出された水を飲む。
食道を伝ってぬるい水が自分の体に入っていくのを感じる。
「·····あの、あなたは」
昨夜のことを全く覚えていない訳では無いが、彼女のことに自信が持てず千晶は問いかけた。
「それきくの2回目ですよ、先生」
千晶から空いたコップをうけとりながら、彼女はまたも無邪気に笑った。
「月島佳澄です。高校の時先生には大概お世話になったはずですが」
月島、佳澄。
その名前を反芻しているうちに、千晶の脳内にある生徒の顔が思い浮かんだ。
姉妹のように慕い合い、甘え、誰よりも打ち解け合った歳の離れた友人。
それが千晶にとっての佳澄だった。
最初のコメントを投稿しよう!