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佳澄の声で千晶が目覚めたのだ。
顔をゆっくり上げる千晶は自分の指がどうなっているのかすぐ察したようだ。
「·····私にも、できるのかしら」
試すような目で千晶は言った。
羞恥と興奮でおかしくなりそうだった。佳澄は朦朧とした意識の中でこくりと1回頷いた。
自分では最後まで到達できなかった。
だから、千晶に。
千晶の指が佳澄を伺うようにゆっくり動き出した。
今度は、千晶の意思で。
先程とは姿勢が逆転し、佳澄は千晶の首に手を回し隠すことなく声や息を漏らす。
攻めに転じた千晶は次第に何かを掴んだようで佳澄が弱い場所をよく攻めた。
佳澄が反応する度に千晶はそんな彼女を可愛らしく愛おしく思った。
今、私の手で彼女を誘っている。
そう思ったら千晶の中にかつてない感情が湧き上がった。
佳澄の顔を見ると朦朧として焦点の合っていない目が千晶の黒目に映った。少し潤んだそれが今まで見た佳澄のどんな表情よりも扇情的でいやらしい。
彼女はいつの間にこんなに"女"になったのだろう。
千晶がそこにキスをすると佳澄はゆっくりと瞼を下ろした。
好きな人に焦らされることがこんなにもむず痒くて焦れったくて気持ちいいなんて佳澄は知らなかった。
やがて千晶の動きは激しくなり佳澄の漏らす声も大きくなる。
快楽の渦に巻き込まれまともな思考もできない頭の中で何かが弾けた。
力が抜けて千晶に体を預ける。
「おやすみなさい」
耳の奥で千晶の優しい声が聞こえた。そして髪に触れる千晶の感触も数秒遅れで伝わってくる。
これは、もしかしたら夢かもしれない。
私がよく見る白昼夢。
二度と会えないかもしれない千晶との夢のような幸せな時間。
こんな幸せな夢を見てしまったらバチが当たるかもしれない。
佳澄はぼんやりとそんなことを考えながら眠りに落ちた。
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