四月馬鹿になったら

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四月馬鹿になったら

「好きなんです。つきあってください」  校舎裏に突然呼びだされ、告げられた言葉。  なんのことはない。ウソ告だ。わたしは冷ややかに、彼を包む赤いオーラを眺めていた。  わたしには、どういうわけか嘘をついている人間がわかってしまう能力がある。嘘をついていれば赤いオーラ、本当のことを言っていれば青いオーラが見えるのだ。  いいことづくめのようだが、垣間見える嘘のおかげですっかり人間不信になってしまった。この世に嘘を一度もついたことがない人間なんていない。それをまざまざと思い知らされるのだから。  けれど、今日にかぎっては嘘をつかれても、別段ショックは受けなかった。  今日はエイプリルフール。男子がふざけて告白するってこともありえるだろう。 「うん。いいよ」  そんなわけで、わたしも四月馬鹿になって答えた。  なのになのに、どうして彼のオーラが急に赤から青へと変化してしまうのか。 「え。ホントに?」  驚きと喜びが混ざったような表情を浮かべ、彼は嬉々としてしゃべった。 「フラれたら、『エイプリルフールでした』ってボケるつもりだったから、まさかOKしてくれるなんて夢みたいだよ!」  青く輝く彼のオーラに気負けし、わたしは目をつぶって熱くなる頬を両手で押さえた。  お題:「エイプリルフール」を恋愛で。
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