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「よし、連絡事項は以上、じゃあ解散……の前に掃除は二班! 今度こそ解散ー気をつけて帰れよー」
間延びした担任の先生の声が響く。次第にガタガタと椅子や机を下げる音と談話で騒がしくなった。入っているものは変わらないのに朝よりも重たくなったリュックを背負う。スカートからイヤホンを取り出して手のひらでころころ転がしてみた。雨の日はどうにも気分が晴れない。楽しみにしていた友達との約束でさえ、適当な理由をつけてキャンセルしてしまおうかなどと考えてしまう。どうにもネガティブだ。
お気に入りの赤い折りたたみ傘を広げ、水溜まりを避けて通る。雨の日独特の匂いが鼻を刺激してくる。天気予報を見ておけば良かったと足元を見て後悔するばかりだった。新品の赤いレインブーツを履きたかったのだ。やけにむしゃくしゃして小石を蹴飛ばしてやった。
今日は地下鉄の改札口付近で待ち合わせをしていた。LINEにはもう着いたよーと可愛い絵文字つきメッセージが5分前に来ている。改札口付近に友達はスマホをいじりながら突っ立っているのが見えた。相変わらず足元は着飾らないところを見て思わず口元が緩んだ。スカート丈は短いクセにインヒールなどは選ばず、スニーカーを必ず選ぶ。デザインこそ可愛いものだが、歩きやすさ重視なところを見ると可愛げがあった。
友達に手を振ろうと軽く手を上げる。イタズラっ子のような笑い方をする彼女と目が合い、あちらも手を控えめにこちらへ向けた。同時に肩に手を置かれ後ろからクラスの友達に声をかけられてしまった。無論、最悪なタイミングとしか言いようがない。あちらと目が合ってしまっているのに、これはどう落とし前をつけてくれるのだろうか。おまけに一人じゃない、三人のグループから声をかけられた。
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