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華の女子高生
「どーぞ」
「お邪魔しますよー」
一人暮らしの狭い一室へ案内する。鍵を開けるのも初めは苦労した。学校のトイレの鍵とは大違いだったからだ。トイレの花子さんとして生活してきた私としては、鍵といえばあの形なのだと思っていた。トイレが和式から洋式になり、そして多様な制服で時代の流れを感じ取っていた私だったが、その感覚さえも幸をなさず、結果としてかなりの時代遅れした女になってしまっていた。今は生活もしているから、かなりわかっている。やはり想像しているだけでなく行動すべきなのだ。
「お菓子用意してくるから待ってて」
「あんがとー。私もお菓子持ってきたんだけどさ……じゃじゃーん! 見てください!」
「これ期間限定のやつ?」
「そう! 食べたくて買ってきちゃったよー」
「私もそれ食べたー、そうだ飲み物何がいい?炭酸もあるけど」
「コーラで。てか、そろそろ外してきてもいい?ムズムズするんだよねそろそろ」
「いいよ。ソファの横にでも置いといたら」
「そーする」
炭酸はあるとは言ったが、果たして買ってきたものが黒い炭酸だったかは覚えていない。黒っぽかった気はするのだが。冷蔵庫の取手口に手をかけると、冷気が正面からやってきた。ラッキー……お目当ての炭酸は黒色だった。今日はついている。内心オレンジ色だったらどうしようなんて考えていたから、小さくガッツポーズをした。赤色のコップに並々と注ぎ入れ、お盆の上に二つ用意する。それにお菓子の袋を三つ四つ、甘いもの塩気のあるもの辛いものを組み合わせる。前にグミを出したらほとんど手をつけず、以来グミは禁じ手となってしまった。
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