51.『白』

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 まるで宇宙がそうであるかのように、星の数、もしくはそれ以上の生命の数。  会ったことある人も、ない人も、黒人も白人も、子どもも老人も、産まれたばかりの人も、死んだばかりの人も。  暁くんも、かなえさんも。  今、現世に肉体を持って存在していなくても、魂は皆等しく、ここにある。  みんな、仲間なんだ。    1人1人は『個』で、光からの位置はそれぞれ違うけど、同じ条件でここに、この空間にある生命だ。  皆、この白い光から産まれ、育てられている光の粒、神の子どもだ。  皆、それぞれ苦しみ悲しみ、喜び楽しんでこの世を生きている。  もしくは、存在している。  それぞれがそれぞれの希望を、目標を持ち、試練に奮闘して魂を磨いている。磨いて、光に近づこうとしている。  見える。  病魔と戦っている魂。  重傷を負っても、愛する人たちのために再起を誓う魂。  身体の傷じゃなく、心の傷に苦しむ魂。  ダメだと分かっているのに、憎むことしか出来ない魂。  家族のためにと自己を犠牲にして寿命を縮める魂。  誰かのためにと夢を捨てる覚悟をした魂。  誰かのためにと夢にしがみついている魂。  光を望みながら、闇にしか生きられない魂。  光に近いはずなのに、闇の方に興味を持つ無邪気な魂。  最終的には、光がゴールのはずなのに。  皆、なかなか誘惑に勝てず、試練を乗り越えることが出来ず、同じ場所を何百年もさまよっている。  魂の玉はなかなか光の方に進まない。  一進一退、たまにポンと前進したり、後退したりして、ほぼ同じ場所で揺れている。  難しい。  まっすぐに進むのは、簡単に見えて、誰にでも出来ることじゃない。  けれど頑張っている。  どんな困難があっても、逃げることなんて出来ないから。  乗り越えなきゃ進まないから。  魂に『死』はない。  光に溶け込むまで、『自分』は存在し続ける。  何度も、何十回も、何百回も。  ループは続く。  諦める、リタイヤする、という選択肢はない。  逃げても、存在は、『自分』は消えないからだ。  和子は果てしなく広がり存在する魂の玉たちの波動を感じ、その辛苦に立ち向かう懸命な姿勢に心を打たれた。  そしてこれまでの自分の甘さ、愚かさ、自己中な態度に滅入ると共に、何だかどこか嬉しくて、心強い気持ちが沸き起こるのを感じた。  あたしは1人じゃない。  1人だけど、1人じゃない。  みんな、戦っている。  みんな、頑張っている。  1人じゃない。  1人じゃないんだ。  同じゴールに向かって、みんな進んでる。  あたしたちはみんな、家族みたいなものだんだ・・・・・・。 8117796d-f630-4e8a-a37b-29e5ca1fec98
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