14人が本棚に入れています
本棚に追加
3話「歯」おひさま!
伝統と文化の街、倫敦。
この物語は、倫敦のちいさなお屋敷を舞台にお届けする。
9歳のちいさなメイドちゃんと、お年を召した奥様の、1年間の日常です。
奥様は仁徳をお持ちなので、客間はよくサロンになります。
「あのねえ、うちは隠居老人の集会所じゃないのよ」
いらっしゃる方はお年を召した男性ばかりです。
メイドちゃんが淹れた紅茶やコーヒーは、老紳士たちに好評です。缶ビールの次に好評です。
「隠居してないヤツは夜に来るよ。うちのが今夜迎えに行くから、至急来てくれとさ」
「私は何でも屋でもないの!」
仁徳をお持ちの奥様ですが、毎日ウィンブルドンの試合を観にいらっしゃる皆様には少々ご立腹のようです。
「せっかくの6月なのよ。他に行くところはないの」
「あの世しかないなあ」
馬耳東風の老紳士たち。1人がふいに尋ねます。
「ローザ、メイドちゃんにちゃんとごはんあげてる?」
「失礼にもほどがあるわよ」
だってほら、と窓の外を指し。
「メイドちゃん、板かじってるぞ」
青々伸びた草をむしる間間に、板切れをかじるメイドちゃん。
……あまりお客様に見せる姿ではありません。
最初のコメントを投稿しよう!