3話「歯」おひさま!

2/4
前へ
/86ページ
次へ
「ああ。あれね。歯がかゆいのよ」 「かゆい?」 「抜けたの、最後の乳歯が」 「へえーっ」  客間に集う老紳士、急ぎメイドちゃんを呼び寄せます。 「おー、ホントだ。ちっちゃい歯が生えてきてる!」 「次俺、俺な!」  老紳士たちは、もうテニスなんかそっちのけ。  メイドちゃん、かなーり嫌そうです。  優秀なメイドとして、お客様に無礼を働くわけにはまいりません。  でも、口に指を突っ込まれて生えかけの歯を触られるのは。  やっぱり嫌。  仁徳ある奥様がお止めにならないのは、秘めたる事情があります。  最後の乳歯が取れかけているときに、奥様も同じことをしておられました。  すると、乳歯はポロっととれてしまったのです。  痛くはないけれど、血が出たものですから。  勇敢なるメイドちゃんといえども、号泣せざるを得ません。  そういう秘め事があるので、奥様も強く出れないのでした。 「もうあなたたち帰りなさい! うちは食事の時間なの!」  真実を秘めたるままに、老紳士の皆様を追い出すことなさいました。 「どうせインスタントか市販品だろー」 「明日も来てやるぞー」 「うちのが夜に来るからよろしくなー」
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加