3話「歯」おひさま!

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 ブーブー言いながら、老紳士たちはお帰りです。  ちょっと涙目のメイドちゃん。生えかけの歯を散々触られました。 「ね、ねえ、ユーリ、大人の歯になったことだから。あなたに贈り物をしようと思うの」  やはり奥様は仁徳をお持ちのお方!  メイドちゃんに笑顔が戻ります。  そうです。メイドちゃんは大人になったのです。  英国紳士たるものが、歯をいじくりまわされた程度で泣けましょうや。 「ドリーに買ってきてもらうから、夜まで待っててね」 「はい!」  お隣のベネットさんは、ドリー奥様がハロッズにお勤めです。奥様といっても独身で、旦那様のお嬢さんで、若様のお母様です。  時折、このようにお買い物を引き受けてくださるのです。  今日は遅くなるそうです。  メイドちゃんはベッドで待機中。 「寝ちゃっていいのよ」と奥様はおっしゃいますが。  主から与えられる大人の証を、明日の朝まで待てましょうや。  壁のハリーポッターをじっと見ます。ベネットの若様がくれた映画のポスターです。完結編のだそうです。  メイドちゃんもあんな風に、大きくかっこよくなるのでしょうか。  小さなノック。
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